遊戯

「ねぇ、そこのお兄さん。ちょっと手品を見ていかないかしら?」
その言葉で振り返ってそこにいたのは・・・
  ―――体が一瞬凍るかと思われたほどの冷たい顔―――
・・・ではなく、そんな「仮面」をした身長からして15、6だと思われる道化師のような格好をした少女。
「・・・今時間空いてるし、別にいいよ」
それを告げると彼女は仮面の下で笑った・・・ような気がした。

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「では、ついてきてくださいな。」
その声に惹かれるかのごとく、僕は彼女の後を追った。
入ったのは小さい小屋のような建物で、中は自分でさえも見えないほどの闇が広がっている。
そんな中、彼女の声を頼りに辿り着いたのは、これまた小さなステージ。
ちょっとした照明で照らされていて、その上にはいくつかの手品用の道具らしきものが置かれている。
その丁度正面にあたる席に僕は腰を下ろした。
客は他にいない。
ガランとした空間。
怖いくらいシンとしていて、聞こえるのは自分の鼓動くらいなものだ。
どことなく恐怖を覚える空間。
この空間自体が怖がっているかのようにまで錯覚してしまう。
いつの間にか、ステージの上にに少女が立っていた。
本当に「何時の間にか」だったのだ。
物音1つさせなかったように思われる。
そんなことを頭に巡らせていると、彼女は何も言わずにマジックショーを始めた。
このマジックは予想以上に素晴らしいものだった。
初めはよく見るような簡単なマジック。
何もないスカーフの中から花を出したり、シルクハットの仲から鳩を出したりというもの。
これだけなら何てことないのだが・・・この後だ、感動したのは。
大きな水槽からの水中脱出。道具に細工がないことは僕が確かめた。
他には箱から箱への瞬間移動。1人でやっているようにはとてもじゃないけど見えなかった。
ただ少し疑問だったのは、これだけ高度なマジックを完璧にやってのけるのに、
どうしてこんなところで客1人だけのショーをやっているのか、ということ。
これだけ素晴らしいマジックならもっと有名になっててもおかしくない、と思ったのだ。
ただ単に僕が今まで知らなかっただけかもしれないので、その疑問はそのまま仕舞っておいた。

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どのくらいの時間が経ったか分からないが、それなりに時間も経って遂にクライマックスという雰囲気になった。
そこで彼女が取り出したのは1つのシルクハット。
中に何もないことを証明するかのように僕に見せると、それにスカーフを被せてしまった。
その中から現れたのは真っ白い、1匹の兎。
それを僕に見せると、彼女はまたシルクハットの中に兎を入れてしまった。
そこに持ち出したのは3本の剣。
おそらく帽子に刺して、でも中の兎には傷1つついていないとかいう
お決まりのマジックだろうと眺めていたらまったくそのとおりだった。
ただ、予想と反していたことが1つあった。
それは・・・もう二度とその白い兎の生きてる姿は見られないということだった。
彼女が剣を3本刺してしばらくすると、シルクハットの底がだんだん滲んでくる。
何かと思って、雫が落ちた先に視線をやると・・・それは赤い赤い「血」だったのだ。
これは中の兎の血だとすぐに分かった。
というよりは、状況的にそう思わざるを得なかったのだ。
今度は本当の恐怖に襲われて、逃げようと席を立った時、彼女が縦長の箱を取り出してきた。
それは、丁度人間が1人納まるくらいの縦長の箱。
まるで「棺」だ。
剣が刺せるようになのか、ご丁寧に細い穴まであいている。
そこから考えられる答えは僕の中で1つだった。

――――殺される――――

逃げようと必死だった。
でも動揺している時ほど、人間は思うように動けないものだ。
少女に無理矢理舞台の上までつれてこられてしまった。
そのまま先ほどの「箱」の中へ・・・。
抵抗しても抵抗しても体に巧く力が入らない気がした。
今、箱の蓋が閉まる。カチャンと鍵が閉まるような音までした。
光といえば、先ほどの穴から漏れてくるものだけ。
ツンと鼻にくる臭いがした。
何処かで嗅いだことのあるような嫌な臭い・・・。
・・・それは濃い血の臭いだった。
この中で何人もの人が殺されたと思わせる、とても濃い血の臭い。
思わずむせかえってしまうほどの。
これで頭に仕舞いこんだ疑問も解けた。

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彼女にとって、これは「遊び」にすぎないのだ。
だから「笑っていられる」のだ。
僕に声をかけたときも、「新しい玩具」を見つけられたから笑ったのだ。
彼女にとって、これは遊び。
だから有名になる必要もないし、有名になってしまったらもう遊べなくなってしまう。
無名なのも当然だ。
そう自分で納得し、無駄だと分かりながらも蓋だと思われる部分を叩いて精一杯叫んだ。
それから間もなく、僕の体を何かが貫通したような感覚に襲われ、
生温い血の感触がしたかと思うと次の瞬間には激痛に襲われた。
大した身動きも取れないまま、その痛みに耐えていると新たな衝撃に襲われた。
更なる血の感触。
もう意識も朦朧としていたが、皮肉にもそれだけははっきりと分かった。
そして最後の衝撃。
これを受けてすぐ、僕の意識は消えた。

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残ったのは、血が隙間から流れ出てくるあの「棺」のみ。
それを前に、彼女が狂気の混じった笑みを浮かべていたのを知る者はいない。
もしかしたら・・・彼女自身も気づいてないかもしれない・・・。




懐かし小説第二弾!
はぃ。心臓に悪いですネ・・・いろんな意味で。(何
何か読めない字、あるし・・・朦朧です。もうろう。
これも悲惨。悲惨だけど、お気に入りの曲のイメージなので
何となく気に入ってます。
とは言っても、曲名を公表してしまうと吹奏楽仲間から攻撃されそうなんで
黙っておきますが(w

かるーく読み流してくれてると嬉しい限りですw(ぇ


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